裁定取引(アービトラージ)について

経済

本日は「裁定取引」(アービトラージ)について書いてみようと思います。

裁定取引(アービトラージ)とは

「裁定取引」(アービトラージ)とは、似たような金利や価格をもつ2つの商品があった場合に、その金利や商品の価格が、一方は高く一方は安いというように差が発生した際に、割高となっている金利や商品を「売り」、割安となっているものを「買う」という投資を行うことによって、その価格差を収益とする取引手法のことをいいます。

一般的に「鞘取り」とか「鞘抜き」とか言われる言葉は、裁定取引の価格差を「取る」「抜く」ということになります。

資産運用の世界では、この「裁定取引」を利用した投資機会を多くの金融機関・ヘッジファンドまた個人投資家が狙っており、もしこのような機会があれば、瞬時に解消される、というのが市場における前提条件となっています。

裁定取引の例

もう少し具体的に説明するために、少々極端な例を仮定してみたいと思います。想定するケースは以下のようなものです。

  • A銀行とB銀行という2つの銀行があるとする
  • 2つの銀行とも「貸出金利」と「預金金利」は同じ利率とする
    (ここでは銀行の手数料の影響を除いたほうがわかりやすいため)
  • 2つの銀行の金利(年率)はそれぞれ、A銀行「5%」、B銀行「10%」とする

現実的には、ほとんどありえない前提ですが、一旦ご容赦ください。
このようなケースがあるとしたら、一般的な投資家はどのような投資行動をとるでしょうか?

答えは、次のようになることが予想されます。
この仮定の世界に100万円を投資するとするのであれば、

  1. A銀行で100万円借りる
  2. B銀行に100万円預金する
  3. 1年後にB銀行からの金利10%(10万円)を受け取り、A銀行に借入金利5%(5万円)を返済する。差額5万円が投資収益として残る

と、このように自らの資金を1円も投資することなく、5万円の収益をゲットすることができでしまいます。
このようなケースのことを「裁定機会」と呼び、この価格差を利用した取引のことを「裁定取引(アービトラージ取引」と呼びます。

またこのケースの場合、自分自身で1円も資金を出していないので、「フリーランチ」(日本語でいうと「タダ飯」)とも呼ばれたりします。現実にこんなチャンスがあったら、どれだけ良いでしょうか。金融・ファイナンスの世界では、この「フリーランチ」の機会はほとんどない、ということが前提・仮定になっています。
なぜなら、このような(極端ではありますが)ケースがあれば、多くの投資家がこの裁定取引に参加するはずです。

そうすると、

  • A銀行でお金を借りる人が殺到する(A銀行資金の需要の増加) => A銀行の貸出金利が上がる => 5%からだんだん金利上昇
  • B銀行にお金を預ける人が殺到する(B銀行資金の供給の増加) => B銀行の預金金利は下がる => 10%からだんだん金利下降
  • ある時点で、2つの銀行の金利差が無くなる

となっていくことが考えられます。最終的に金利差が無くなり、裁定取引の機会が無くなりますので、このような状態を「無裁定(ノーアービトラージ)」と言います。

実際の例

裁定取引を利用したトレードの具体例として、例えば「日経平均」と「日経225先物」を使ってみたいと思います。

簡単のため、現時点の日経平均株価が「\30,000」だと仮定します。ここで日本の国債の金利がこれまた仮に年率1%で、1年後限月の日経225先物も投資が可能であるとします。
この場合、理論的には、日経225先物の現時点での価格は「\30,300」となるはずです。なぜなら、無リスク金利である国債の金利が年率1%なので、\30,000で国債を購入した人は\300の利息が付き、1年後には元本と合わせて\30,300の回収ができるからです。

従って、現時点を基準として、市場において日経225先物がこの「\30,300」よりも高い金額で値付けをされていることがあった場合には、

  • 日経225先物「売り」
  • 日経平均(現物)「買い」

というトレードを行えば、無リスクで「鞘取り」をすることができます。
(ここでは手数料等は一切考慮しておりません)

自分自身の経験

恥ずかしながら、直近でまさに自分自身が鞘取りをされる、というお粗末な事件がありました。

起業した会社では「せどり」を行っており、ここでは「Amazonセラーセントラル」を利用しています。

ちょうど先日、沢山の品物をFBAに納品をしようとしてパソコンで作業をしていたところ、随分昔に納品して売れ残っていた在庫がありました。いえ、その時はその品物は、既に売却されたものと勘違いをし、出品からデータを削除してしまいました。

しばらくして、削除したことが間違いであったことに気づき、商品を出品の状態に戻すべく、取り急ぎデータ上のいくつかの入力をしておいたのですが、その際に、とりあえずと思って入力した「販売価格」がAmazon上での価格より、随分と安い価格だったようで、あっという間にせどらーさん(恐らくですが)に刈り取られてしまいました。そりゃそうですよね。手数料含めても利益が出るのであれば、普通に買いますよね。

ということで、市場には虎視眈々と裁定取引のチャンスを狙っている人達もいますので、皆さんも十分にお気をつけください・・・。

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